教会月報 巻頭言

2017年7月・8月​​​​​​

少年の夢

加古川カトリック教会
主任司祭 赤波江 豊

 司祭になって間もない8月、ドイツの恩人を訪ねて行ったことがあります。
その時乗った飛行機の隣の席に、学生らしき人が座っていました。
どちらからともなく話しかけているうちに、彼はその年、当時の神戸商船大学を卒業して、これからドイツのブレーメンに留学に行くところだと話してくれました。

 彼が言うには、「私は子どもの頃から船が好きで、よく父親と一緒に神戸港に船を見に行っていました。やがてどうしても船の勉強がしたくて神戸商船大学に入りました。そこは全寮制で生活も厳しく、私はもともと体が小さく痩せていましたが、体型が変わるくらい鍛えられました。大学卒業後、もっと船の勉強がしたくてドイツのブレーメン大学に行くことにしました」。
彼の話を聴きながら、彼の表情には何とも言えない爽やかなものを感じました。
そして彼は「子どもの頃の夢を実現できる人は幸せです」と付け加えました。
彼は神戸の須磨区の人でした。
今、彼はどうしているのでしょうか。
きっと充実した人生を送っていることでしょう。

 「子どもの頃の夢を実現できる人は幸せです」。
彼が語ってくれたこの一言は今でも私の脳裏にはっきりと記されています。
私はよく子どもたちに将来の夢について尋ねることがあります。
その時、必ず彼の言葉を繰り返します。
子どもたち、夢をしっかり持ちなさい。
夢は必ず叶います。
確かに自分の願っていた仕方で夢が叶わないこともあります。
でも、それは挫折でも失敗でもない。
新しい発見です。
夢を抱いて費やしたエネルギーが無駄になることは決してありません。
夢を抱いて生きる人は、たとえ自分が願っていた仕方で叶わなくても、それまで費やしたエネルギーを無駄にしたくないという思いから、必ず新しい道を再発見します。
そうやって充実した人生を送っている人は無数にいます。
確かに「子どもの頃の夢を実現できる人は幸せです」。
でも、「夢を持つ人はすでに幸せな人です」。
子どもたち、夢をしっかり持ちなさい。

(※ 2014年11月から夙川教会でご指導くださいました 赤波江 豊 神父様は、2017年6月より加古川教会へ転任されました。)