2013年1月
不思議な星に導かれて
ペトロ 梅原 彰 神父
新年あけましておめでとうございます。
昨年は教会創立90周年、聖堂建堂80周年の記念すべき年でした。
「信仰年」に入った新しい年を迎えた私たちは、大きな希望と夢をもってスタートしました。
イエズスがヘロデ王( 37 B.C. ~ 4 B.C. )の時代にユダヤのベツレヘムにお生まれになったとき、東方の三人の博士(天文学者)が不思議な星の導きのもとに、エルサレムにやって来て、「お生まれになったユダヤ人の王はどこにおられますか、わたしたちはそのしるしの星の昇るのを見て拝みにきました」と云った。
しかしこの言葉は当時のユダヤ人の王ヘロデを大いに驚かせ、心配させました。
ユダヤ人の王が生まれるとのニュースに接したとき、ヘロデ王は自分の地位を脅かすライバルの出現におびえたのです。
博士たちは東の国アッシリア・バビロン・ペルシャの出身で、紀元前6世紀に滅ぼされたユダヤ民族の主要人物が捕らえられ移されたところでしたから、ユダヤ人の宗教についてはかなりの知識を持っていました。
又イエズスの誕生前後のユダヤ教はあちこちにユダヤ教会堂をもち、海外への宣教に努めていました。
ですから当時の人々は「ユダヤ人の王」としてお生まれになるかたの希望について、よく知っていました。
その星がどんな星であったかについては教父、聖書学者、科学者などが色々な説を出していました。
それが彗星だとも考えられます。
何はともあれ、この星の現れは不思議な現象だったと考えられます。
すなわち星に関する言い伝えを知っていた博士たちがこの星を見て、ユダヤの国に偉大な王が生まれたことを知ったのだと見ています。
民数記24章7に「一つの星(高貴の人の生まれを象徴する)がヤコブから進み出る。ひとつの笏(しゃく:王位の象徴)が立ち上がる」と。
尚この不思議な星が博士たちを導いて幼児のいる所に導いてとどまったという。
メシアを尋ねてはるばる旅した博士たちが都で、ついにその場所を教わり喜び勇んでベツレヘムの街道を進んでメシアの門前で足をとめた時、星も彼らの頭上にとどまり、祝福の光を明るく注いだのでしょう。
博士たちは外国人ですからイエズスを、「ユダヤ人の王」と呼びましたが、実は彼らは決してこの王の支配をユダヤ人世界にだけに限られるものと考えていなかったでしょう。
単なるユダヤ人の王としてだけだったらわざわざ苦労してベツレヘムまで来なかったでしょう。
そうではなくイエズスという王は天の星まで喜び踊らせ、光を輝かせる世界的な王であると理解していたのです。
世界的に影響を及ぼす大王の誕生に星の前兆は付きものでした。
古代世界では一つの国に大王が生まれればそれはその国だけが平和に富み栄えるというだけではありません。
ユダヤに素晴らしい王が生まれたという場合それはユダヤ出身の王がヘロデ王を失脚させて、同胞ユダヤ人に内輪の平和を与えるだけでなく、バビロンにもペルシャのも攻め込み平定し王になるということを意味しています。
博士たちが何故はるばると旅し、いち早く王に敬意を表し贈り物を捧げようとしたのかという理由の一つがここにあります。
それですから「ヘロデ王もユダヤ人の王として生まれ方」を「キリスト」神が救いのために任命した者を、彼は神がお立てになる真の王、救い主です。
それで神の王の誕生予定地までミカ書に預言されています。
「エフラタのベツレヘムよ、お前はユダの氏族の中でいと小さき者、お前の中から、私のためにイスラエルを治める者が出る」(5章6)
彼は単にユダヤ人だけが仕えればよいというような地上的民族的な王ではない。
天の星も地上の人類もみなその誕生を喜び迎えるべき大王なのです。
イエズスはまさにキング・オブ・キングスなのです。
私たちの信仰年の旅は前途多難かも知れませんが、不思議な星の導きによって博士たちがイエズスに出会ったように、私たちも希望をもって、キリストに導かれてこの一年をみなさんと一緒に歩んでいきましょう。