例会報告(第42回)

開催日:2016年4月−2016年6月
報告対象:第3編第1部第2章401〜414
報告者:伊藤 理秀

  

第2章 人間共同体

人格と社会

401 人間の次元とはどのようなものですか。
・人間には社会生活が欠かせません。社会生活は人間にとって余分なものではなく、その本性から要求されるものです。他の人と交わることにより、また互いに役立ち会ったり対話したりすることによって、人間はその諸能力を発揮させていきます。こうして召命にこたえるのです。
・社会とは、個々の人間より優先される一致の原理によって有機的に結ばれた人間の集合体です。社会は可見的、また精神的な集団として、時の中で存続していきます。社会を通して、一人ひとりの人間は相続人となり、自分の独自性を開花させる「タラントン」を受け、それを実らせなければなりません。
・人間はその本性に従って成長するために、社会生活を必要とします。家族や国家のような共同体は、一般の共同体よりも直接的に人間の本性に対応します。

続いて402 人間と社会の関係はどのようなものですか。
・すべての社会制度の起源、主体、目的は人格であり、またそうでなければなりません。家庭や共同体のようなある種の社会は人格にとって必要なものです。また諸政治的共同体の中にあっても、国際レベルでも、その他の組織は補完性の原理に照らして有益なものです。
・自主的な団体や組織への参加が奨励されなければなりません。

403 補完性の原理とは何を意味していますか。
・教会は、補完性の原理と呼ばれる教えを打ち出しました。この原理に従えば、「上位の共同体は下位の共同体からその役割を奪い、その内的生活に干渉すべきではなく、むしろたえず共通善の観点から、必要なときにはこれらを支え、これらの相互の活動を調整するために援助すべきです。」
・補完性の原理は国家の干渉については限界を設けます。この原理は個人と社会との間の関係の調和を目指し、真の国際的秩序を打ち立てることを意図したものです。

404 人間としての真の共生のためには、他に何が必要ですか。
・正義と正しい価値の序列を尊重することが必要です。例えば、物質的、本能的次元を内面的、霊的次元の元に位置づけることです。とくに、罪が社会的風潮を乱している場合には、すべての人と人格全体に実際に奉仕するものとなるような社会の変革を目指して回心を促し、神の恵みを願い求める必要があります。正義を実践するために必要で有効な愛こそがもっとも大きな社会的おきてです。
・愛はもっとも重要な社会的なおきてです。愛は他人とその権利を尊重します。愛は正義の実践を要求し、愛だけが私たちにそれを実践できる力を与えてくれます。
・罪によって社会環境が悪化されたところでは、内的回心と神の恵みとに訴えなければなりません。愛は正しい改革へと駆り立てます。社会問題の解決は福音をおいて他にありません。

405 社会における権威は何に基づいていますか。
・「権威」とは、人々に法と命令とを与え、受けた人々はそれに従わなければならないような、個人ないしは団体の資格をいいます。
・すべての人間共同体は、自ら統御する権威を必要とします。権威は人間の本性に基づくもので、市民社会の統一に必要なものです。その役割は社会の共通善を保証することです。
・倫理的秩序のために必要となる権威は、神に由来するものです。
・権威は神が定められた秩序に由来するものですが、政治的体制の決定と政治の指名は国民の自由意思に任されています。
・権威者は、専制的にふるまわず、「自由と責任感に根ざす道徳的力として」共通善のために行動しなければなりません。

406 権威が正当に行使されるのはどのようなときですか
・権威は神が定められた秩序に由来するものですが、政治的体制の決定と政府の指名は国民の自由意思に任されています。
・権威が合法的に行使されるのは、その権威のもとにある集団の共通善を追求し、それを得るために倫理的にゆるされる手段を用いる限りにおいてです。指導者が不正な法を発布したり倫理秩序に反する措置を講じるような場合の命令は、良心を拘束することはできません。

407 共通善とは何ですか。
・共通善とは、集団とその構成員とが、より完全に、いっそう容易に自己の完成に達することができるような社会生活の諸条件の総体である、と理解すべきです。

408 共通善は何を含んでいますか。
・共通善は次のことを含んでいます。すなわち、人格の基本的権利の尊重と推進、個人と社会の有形無形の福祉の進興、社会全体の平和と安全です。
・第一に、個人をその人であるがゆえに尊重することです。共通善を実現するために、公権は個人が持っている基本的で奪えない人権を尊重しなければなりません。
・第二に、共通善は集団の社会的安寧と発展を求めます。権威者は、それぞれの人が真に人間らしい生活を送るために必要なもの、たとえば食料、衣服、健康、仕事、教育や教養、適正な報道、家庭を作る権利などを手に入れやすくなるように図らなければなりません。
・第三に、共通善には平和、すなわち、正しい秩序の持続や保全という内容が含まれています。権威者は適正な手段を用いて、社会とその構成員との安全を図らなければなりません。

409 共通善がもっとも顕著に実現されるのはどのようなところにおいてですか。
・共通善を完全に実現するのは政治共同体です。市民社会やその住民、および中間団体の共通善を擁護し、促進させるのは国家の務めです。
・普遍的共通善を実現するためには、国際的組織を作り、人々の種々の必要を満たすようにしなければなりません。この必要とは、社会生活の領域においては食料、健康、教育・・・であり、ある所に起こりうる特殊な情況においては、全世界に離散した難民の救済、移住者とその家族に対する援助などです。

410 人間はどのように共通善の実現に参加しますか。
・すべての人はその地位と果たす役割に応じて、正しい役割を遵守し、それぞれの過程を守り、各々の仕事に励むなど、自分が責任を負う分野で務めを果たすことによって、共通善の推進に参加します。さらに市民は、可能なかぎり公共生活に積極的に参加しなければなりません。

411 社会が社会正義を保証するのはどのようにしてですか。
・社会が社会正義を保証するのは、人権の尊厳と権利を尊重するときです。
・社会正義は、人間の超越的な尊厳を尊重することなしには得られません。人間こそが社会が目指すべき究極の目的なのです。
・人間を尊重することには、神によって創造されたものとしての尊厳に由来する諸権利を尊重することが含まれています。

412 人間観の平等は何に基づいていますか。
・すべての人は同等の尊厳と基本的権利を有しています。それは唯一の神にかたどって創造され、同じ理性的霊魂を与えられて、同じ本性と起源をもち、唯一の救い主であるキリストにおいて、同じ神の至福に呼ばれているからです。
・唯一の神にかたどって造られ、同じ理性的霊魂を与えられたすべての人間の起源と本性と同一です。すべての人間はキリストの犠牲によってあがなわれ、同じ神的至福にあずかるように召されています。したがって、皆平等の尊厳を持っているのです。

413 人間間の不平等をどのように考えるべきですか。
・無数の人々を襲う非道な経済的、社会的不平等が存在します。そのような不平等は明らかに福音に背き、正義、人格の尊厳、平和に反します。しかし、神の計画に帰すべきさまざまな要因によって、人々の間に相違があるのも事実です。実際、神は各々自分が必要とするものを他人から受け、特別な「タレント」を持つ人はそれを他人々と分かち合うよう望んでおられます。このような相違は人々を寛大さや親切、分かち合いへと促し、しばしばそれを義務付けます。こうして諸文化が互いに豊かになるよう推進します。
・相違は、人間が相互に愛を実践する機会を必ず持てるようになるためです。

414 人間の連帯はどのように表されますか。
・人間およびキリスト者としての兄弟愛から生じる連帯は、第一に富の正しい分配と労働の公平な報酬、より正しい社会秩序を目指す活動によって表されます。連帯の特は物質的冨よりあるかに重要な信仰の霊的冨の分かち合いをも実現します。
・連帯はきわめてキリスト教的な徳です。物的なものの分かち合いをしながら、それ以上に霊的宝分かち合いをの実践するのです。