2010年5月9日

例会報告(第三回)

開催日:2010年4月25日
報告対象:設問161から設問162まで
報告者:
岩井聡一

   今回は、設問161から設問164までを行う予定でしたが、議論が白熱したこともあって設問162までで時間切れとなりました。(議論の内容は設問163を含んでいました。 )“教会は、唯一の、聖なる、使徒的なものです”というテーマの中の最初の設問で、161: なぜ教会は「唯一」なのですか 162: キリストの唯一の教会はどこに存在しますか 163: カトリック教会に属さないキリスト者をどのように受け止めればよいでしょうか という設問でした。すなわち、カトリック教会の唯一性とカトリック教会以外のキリスト教会の位置づけという大きなテーマであり、エキュメニズム(キリスト教会の一致)を考える上でも重要な箇所の一つです。
今回の勉強会の参考資料として、河野さんから提供して頂いた 教皇庁教理省が発布した【教会論のいくつかの側面に関する問いに対する回答】を参考資料としました。これはカトリック中央協議会のホームページの中に載っているので、お読み下さい。

カトリック教会に対する見解
   “教会は唯一の、聖なる、使徒的なものです。”という文に対して“使徒的なもの”とは使徒継承の意味であることを再認識しました。 
   “キリストの唯一の教会は、この世に設立され組織された社会としては、ペトロの後継者、および彼との交わりのある司教たちによって統治されるカトリック教会の中に存在します(subsist in)。”とういう回答の中で、カトリック教会が使徒継承し、ペトロの後継者である唯一の教会であると述べています。その根拠として、ヨハネ20章19-23、ヨハネ21章15-19、マタイ16章13-19 などが挙げられます。
   “あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。陰府の力もこれに対抗できない。わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。”(マタイ16章13-19)

カトリック教会以外のキリスト教会に対する見解
   キリストの教会は唯一の教会です。しかし多様性も表しています。”教会という共同体の中にも、独自の伝統を保つ諸部分教会が合法的に存在します”(「カトリック教会のカテキズム」814項)という箇所が議論され、この部分教会とは主として東方教会のことを指していると考えられます。東方教会(ギリシア正教会、ルーマニア正教会、ロシア正教会などであるが、特にギリシア正教会)はローマ教皇の首位権は認めていませんが、主教(司教)は正当な12使徒の後継者であり部分的教会と呼んでいます。→教皇庁教理省が発布した【教会論のいくつかの側面に関する問いに対する回答】の中の“第4の問い:なぜバチカン公会議は教会ということばをカトリック教会の完全な交わりから分かれた東方教会にも用いるのですか。”に対する回答に上記の内容が示されています。
   もともと、ニケアコンスタンチノープル信条において 聖霊は父と子から出て となっているが、カトリック教会もギリシア正教会も9世紀までは聖霊は父から出て となっていた。10世紀にカトリック教会が聖霊は父と子から出て として、違いが出てそれに政治的状況が絡んで11世紀に分裂したという経緯があるというお話しがでました。
   東方教会以外の諸教会すなわちプロテスタント諸教会に関してすなわち16世紀の宗教改革から生まれたキリスト教共同体に”兄弟”と呼びかけるが”教会”と呼んでいない理由は、【教会論のいくつかの側面に関する問いに対する回答】の中の“第5の問いに説明されています。―これらの共同体は叙階の秘蹟による使徒的継承をもたず、それゆえ教会を教会たらしめる本質的な要素を欠いている―というのが主たる理由のようです。
   しかしながら“第2の問い:キリストの教会はカトリック教会のうちに存在するとはどういう意味ですか。”に対する回答の中に、“キリストの教会はカトリック教会といまだ完全に交わりをもたない諸教会また諸教会共同体においても現前し、働くといっても間違いはありません。こうした諸教会また諸教会共同体の中にも聖とする種々の要素、また真理の種々の要素があるからです。”と説明されています。
   人間個人としては、熱心にキリストを信じて御旨に沿って生きておられるプロテスタントの信者さんは、(たとえば)不熱心なカトリックの信者さんより、キリスト者としてふさわしいのではないかと思います。ただ、キリスト共同体の教え、存在として、使徒継承として不完全な部分があるという意味ではないかと思います。
   キリストを信じて生きるものとしてお互いに認め合うことと、カトリック教会の教えを継承することはその意味で矛盾しないことになるのではないでしょうか。